アドラー流「褒めない・叱らない子育て」がママと子どもをラクにする
自己啓発で人気No1.の本といえば、アドラー心理学をベースにした「嫌われる勇気」。この冬はTVドラマ化もされ、再び注目されていますよね。そんなアドラー心理学を子育てに活かすことができるってご存知ですか?
今回はアドラー流「褒めない・叱らない」子育て法を紹介します。
で、イライラが爆発して感情的に怒鳴っちゃった。私ってほんとダメなママ…。
親と子は対等な関係である
アドラーは人間関係の縦の繋がりを否定し、横の関係を築くことを提唱しています。それは親子の関係でも同じです。もちろん子どもが社会に出るまでは親が養うという責任はありますが、だからと言って子どもを操作しようとしたり、支配できると考えてはいけないのです。
子どもの課題に介入しない
子どもが親の手を離れて自立するまでの援助をするのが子育ての目的です。でも、多くの親たちは援助と介入の区別がつかなくなり、自分の言葉が子どもの自立を妨げていることに気づかないことが多いようです。援助と介入の違いを知るためには、まずは課題の分離をしてみましょう。
課題の分離とは、相手の課題と自分の課題を切り離して考えるということです。これは誰の課題か?を考えるには、これを行わなかった(行った)ときに、その結末は誰に降りかかるのか?あるいは、この問題の最終的な責任は誰が負うことになるのか?を考えてみればわかります。
ちゃんと勉強して頭の良い子に育って欲しいーそうすれば、いい大学に入れて、ちゃんとした就職先が見つかるはず。親なら誰でもそう思うかもしれません。でも、頭が良いこと=幸せとは限りません。そう思うのは親のエゴ、価値観の押し付けでしかなく、子どもの課題に土足で踏み込むことになります。
「あなたのため」という言葉の裏に、世間体や見栄など「自分(親)のため」という思いが隠れていないか?考えてみてください。子どもはこのような親の誤魔化しを敏感にキャッチしてしまいます。自分の課題に介入されることに強いストレスを感じて親に反発したり、逆に「親の言う通りにしていればいいんだ」と自分で考えることを放棄し、主体性や自主性のない子どもに育ってしまうこともあります。
「放任する」のではなく「援助する」ことは必要
アドラー心理学は放任主義を推奨しているわけではありません。子どもを放置して、何をしているのか知りもしないし、知ろうともしないというのでは、子どもとの距離が離れすぎてしまい、子どもが親の愛情を感じることができなくなってしまうでしょう。
援助するとは?
大切なのは、子どもが何をしているのかを知った上で、見守ること。そして手助けが必要ならいつでも援助するという姿勢を見せることです。
援助するとは、
- 必要な情報を与える
- 手助けが必要ならいつでも言って欲しいと意志表示する
- 実際に助けを求められたときには、援助を惜しまない
という姿勢です。
「勉強をしない」「宿題をしない」という子どもには、勉強・宿題をしないとどうなるか?という情報を提供した上で、勉強をするのかしないのかの判断は子どもに任せます。
具体的には、
- 学年が上がるにつれ勉強は難しくなるの。今わからないところが残ったままだと、2年生、3年生になったときに、もっとわからなくなってしまうかもしれないよ。
- 宿題をしていかないと、明日の授業でわからないことが出てくるかもしれないよ。
- 宿題をするのは学校のルールなの。ルールが守れない人がいると、お友だちに迷惑がかかってしまうのよ。
- 今日は7時から●●君の好きなTVがあるね。宿題は夕飯の前に済ませてしまったほうが、ゆっくりTVが観れると思うけど。
など、なぜ勉強が必要なのか?なぜ今やったほうがいいのか?などの理由を説明した上で、「わからないことがあったら言ってね」といつでも支援することを伝えます。
共通の課題を設ける
あなたの課題、私の課題を切り分けることは非常に重要なことですが、中には切り分けることができない「あなたと私の共通の課題」もあります。一番わかりやすいのは、相手から手助けを求めてきたときです。勉強に限らず、兄妹の関係や友人関係のことなど、子どもが悩みを打ち明けてきたときには、それを親子の共通の課題として考えるという姿勢はとても大切なことです。
まずは、子どもが自分ひとりで出来ることなのか?出来ないことなのか?を考えてみましょう。ひとりで出来ないことであれば、それは共通の課題として考えて良いでしょう。
「子どもだから出来ない」と何でも親が手だしすると、子どもはいつまでも「出来ないフリ」をするわ。それもある意味、親の期待に応えようする行動かもね。
子育てに関わらず、人間関係のトラブルは他人の課題に土足で踏み込むことから始まります。土足で踏み込まなければ、ある程度のリスクは回避できるのです。
そのためには、「●●についてあなたと相談したい」という意志表示をすることです。「嫌だ」と言われたら、「あなたが相談したいと思ったときはいつでも言ってね」と次の機会に先おくりするしかありません。
また、子どもに「ルールを守る」ことを教えたいなら、大人にもルールを作りそれをきちんと守るというのも大切なことです。例えば、子どもに門限を作るのなら、父親にも門限を作る、子どもにおもちゃを片付けるというルールを作るのなら、父親は読んだ新聞は自分で片付けるというように、内容は違っても「ルールを守る」という共通項を作ることで「人間として対等」を体現することができるはずです。
褒めない・叱らない子育てとは
アドラー心理学では、他者をほめたり叱ったりするのは「アメを使うか、ムチを使うか」の違いでしかなく、背後にある目的は操作であるとして、褒めること叱ることの双方を否定しています。褒めること・叱ることは何故いけないのか?そして子どもとどう向き合っていけばいいのかを考えてみましょう。
叱る行為には有効性がない?
叱るという行為は確かに即効性があります。叱られれば、その問題となった行為は一旦辞めさせることができるでしょう。
でも子どもが「何故叱られたのか?」を理解していなければ、また同じことを繰り返します。親は叱りながら、もっと強く叱れば止めさせることができるのでは?と考え、叱ることをエスカレートさせてしまいます。繰り返している時点で叱る行為には有効性がないと思っていいでしょう。
叱るのではなく言葉でコミュニケートする
小さな子どもは、自分の気持ちを言葉でうまく表現できないときに、泣いたり怒ったり感情を使って親に気持ちを伝えようとします。そこで親に「ダメ」と言われてしまうと、もしかしたら自分の気持ちがちゃんと伝わっていないのかもしれないと思い、泣く・怒るという感情をエスカレートさせてしまうことがあります。
「泣いていてはわからない。何をして欲しいのか言葉で言ってみて」と聞いてみましょう。言葉にすることで、子どもも一旦落ち着き、自分の気持ちを整理することができます。
「お菓子を買って欲しい」と言ったらば、「今日はダメ!」と頭ごなしに否定するのではなく、「お菓子が欲しかったから泣いていたのね」と受け止めた後、「なぜ今日はお菓子を買うことができないのか?」という理由を説明してあげましょう。こうすれば子どもが必ず納得するというわけではありませんが、少なくとも「自分の気持ちが伝わっているのかどうかわからない」というモヤモヤはなくなるはずですよね。
また「泣く・怒ることで相手を動かすことはできないということ」、「●●のときはお菓子を買ってもらうことはできない」ということも学習することになるでしょう。
人は失敗からしか学べない
失敗や未熟さを指摘してはいけない。できないからといって取り上げてもいけない。相手の勇気を奪ってしまうからだ。自ら困難を克服する機会を奪ってしまうのだ。 by アルフレッド・アドラーpic.twitter.com/ICLJ6WBdnu
— アドラーのことば (@adler187027) February 26, 2017
転ばぬ先の杖とばかりに、先回りして親が何でもやってしまったり、子どもに決断をさせなかったり、何かをやる前に諦めさせてしまう親御さんもいますよね。アドラーは「人は失敗からしか学べない」と言っています。転ばぬ先の杖が、時に子どもの勇気くじきになっていることに気づかなければいけません。
岸見先生の子育ての実体験を一つ紹介しましょう。
私は息子にどうすればいいか、尋ねました。彼は「雑巾で拭く」と言って、自分で拭きました。さらに「これからミルクをこぼさないためには、どうしたらいいと思う?」と問いました。これに対して息子は「これからは座って飲む」と言い、以来ミルクをこぼすことはありませんでした。全く叱っていないですよね。LEEインタビュー
もしも「危ないから」と言って親がマグカップを取り上げてしまえば、子どもはミルクを取り上げられたことで泣きだしてしまうかもしれません。こぼした後に「何やっているの!」と叱り、床を拭く・濡れた服を着替えさせるという一連の対処を親がすべてやってしまえば、子どもは「自分は何もできない」ことを実感するだけで、何一つ学ぶことはできないでしょう。
子どもが何か失敗したときには、
- 原状回復は(可能な限り)自分でさせ、やったことに対して責任を取らせる。
- 誰かを傷つけるようなことであれば謝罪させる。
- 同じ失敗を繰り返さないための話し合いをする。
ことにより、失敗から学びを得ることができるようになります。
褒めることは子どもを見下すこと
褒めるという行為には、「能力が上の人が能力が下の人を評価する」という側面があります。子どもと対等の関係を築くためには、避けなければいけない行為です。
また、「褒められる」ことで承認欲求を満たしていた子どもは、「もっともっと」とその要求をエスカレートしてくるでしょう。褒められたいという動機で行動することは、親や他人に依存する生き方に繋がっていき、「すごいね」「えらいね」と言われなくなることに不安を感じてしまうのです。
人には優越性の追求という普遍的な欲求があります。簡単に言うと、向上心や理想を追求しようとする姿勢のことです。子どもは自分が特別な存在になることで、この欲求を満たそうとします。特に「すごいね」「えらいね」と言われて育った子どもは、この欲求が強く出るはずです。
ところが、学校では思ったように褒めてもらえず、特別な存在になれなかった場合には、安直な優越性の追求に走ることがあります。これは、一定の努力をして評価を得ようとするのではなく、問題行動を起こして注目を集めようとすることです。つまり悪目立ちすることで特別な存在になろうとします。
褒めるのではなく勇気づける
アドラー心理学では、褒めたり叱ったりするのではなく、勇気づけというアプローチを推奨しています。
勇気づけとは、相手に感謝の気持ちや素直な気持ちを伝えることです。子どもが何かお手伝いをしてくれたら「えらいわね」という評価の言葉ではなく、「ありがとう」という感謝の気持ちを伝えましょう。人は「他人に貢献できた」と感じることで、自分の価値を認識することができるのです。
勇気づけのアプローチには共感も大切な要素です。例えば子どもの行動を褒めてあげたいと思ったときには、「ひとりでできたね」「きれいに片付けられたね」「人参も残さず食べられたね」というように、子どもの行動をそのまま口に出すだけでも共感性が伝わり、子どもは自分が認められたこと認識します。
もっと褒めてあげたいときには、
「テストで100点がとれたのね。ママは嬉しいわ!」「●●君が××できたから、ママは驚いたわ!」
というような「私(I)はこう思う」というIメッセージを使いましょう。
ママのイライラがなくなれば子どもラクになる
ママのイライラが子どもに伝播する
子育てに不安や心配はつきものです。子どもが思い通りに動いてくれなければ、「自分のやり方が悪いんだ」と自分を責めてしまうママが多いかもしれません。そんなママのストレスは、やがて「一生懸命やっているのになぜ言うことを聞いてくれないの!」というイライラに変わってしまいます。
子どもはそんなママの姿を鏡のように映し出ます。ママがイライラすれば子どもの精神状態も不安定になり、泣いたり・怒ったりという問題行動を起こすようになるでしょう。ママのイライラが子どもに伝播し、さらにイラつかせる行動を引き起こすという悪循環にハマっていくわけです。
ママのイライラを解消するには
「子どもが初めてしゃべった」「子どもがヨチヨチ歩きを始めた」など子どもが初めて体験することは=ママも初めて体験すること。子育ては、子どもも親も“初めて”の連続ですよね。それは、子どもが成長し大人になってもずっと続くことです。
たとえ2人目、3人目の子どもであったとしても、性別・性格・個性など、みんな違う別々の人格なのですから、やっぱり初めての連続になるわけです。初めてやることを最初からうまくできる人なんていません。まずは肩の力を抜いて、自分に厳しい責を課すことをやめましょう。
そして子どもが困った行動をしたときには、物事の見方を少し変えてみてください。
アドラー心理学の基本前提の1つに認知論という考え方があります。簡単に言うと「人は客観的事実だけで物事を判断しているのではなく、そこに主観的な解釈や推測、感情がプラスされている」というもので、いわば人は自分色のメガネをかけて世界を見ている状態なのだということです。
このエピソードの中で、事実は「息子は子どもたちの輪を離れて一人でどこかに行ってしまうことがある」という部分だけですね。「友だちから嫌われてる」「性格的な欠陥がある」というのは母親の推論だし、「子どもを心配する」一方で「ママ友との会話を中断された」という母親自身のネガティブな感情も垣間見れます。
また、「いつも息子は」「心配ばかり」と言っていますが、本当にいつもなのでしょうか?友だちの一緒に遊んだことは一回もないのでしょうか?また、親を安心させるような行動はまったくできないのでしょうか?そんなことはないはずですよね。
事実と認知を混同してしまうと、悲観的な部分だけがクローズアップされてしまうことがあります。 「ママが困った」と感じるのは、ママのメガネを通してみた世界です。イライラしたときには、メガネをかけ替えてみてください。きっと違う見方ができるはずですよ。
アドラー流子育てーおススメの本
「嫌われる勇気」をはじめ、アドラー心理学の自己啓発本はたくさん出版されています。でもそれを子育ての実体験に結び付けて考えるのはなかなか難しいものです。そこで子育てに特化したアドラー本を3つ紹介しましょう。
子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気
「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」、アドラー勇気シリーズの第三弾は「子育ての勇気」です。著者である岸見先生の実体験を交えながら「子どもとの関係づくり」がまとめられています。子育てについての学びはもちろん、読者自身の生き方についても問いかけてくる1冊です。
タイトル:子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気(幻冬舎)
著者:岸見 一郎
価格:¥1,188(3月4日現在)
イライラしないママになれる本 子育てがラクになるアドラーの教え
イライラしないママになれる本 子育てがラクになるアドラーの教え
親子関係の「困った」を技法によって解決してくれるのが「イライラしないママになれる本子育てがラクになるアドラーの教え」です。机上の空論ではなく、ママにしかわからない悩みにきちんと答えてくれる1冊。これを読めば子育てがぐーんとラクになるはずです。
タイトル:イライラしないママになれる本 子育てがラクになるアドラーの教え(秀和システム)
著者:野口 勢津子 監修:岩井 俊憲
価格:¥1,404(3月4日現在)
マンガでよくわかるアドラー流子育て
本を読むのは苦手…という人におススメなのが、「マンガでよくわかるアドラー流子育て」です。SMILEというアドラー流の子育て講座の内容がベースになっているハンドブックのようなアドラー本です。具体的な事例がマンガで紹介されているので、とてもわかりやすいですね。初めてアドラーに触れるという人にもおススメです。
タイトル:マンガでよくわかるアドラー流子育て(かんき出版)
著者:宮本 秀明 監修:岩井 俊憲
価格:¥1,404(3月4日現在)
できることからはじめよう!
いかがでしたか?
アドラーを知ると世界はとてもシンプルだということがわかります。でもそれは自分の生き方を変えることにもなるため、実際に実行しようとすると尻込みしてしまう人も多いのです。また、夫や祖父母など家族の理解や協力が得られるか?というのも心配ですよね。
本に書かれていることを全部実行できなくても当たり前。まずはできることから始めてみましょう。あなたが変われば子どもも変わります。
家族の中のひとりが変われば、家族全体が変わっていきます。自分ひとりでもはじめる勇気を持ちましょう!
アドラーについてもっと知りたい!という人は、
「アドラー心理学って何?「嫌われる勇気」でラクに生きる!恋愛編」
「アドラー心理学って何?「嫌われる勇気」でラクに生きる!仕事編」も合わせてご覧ください。
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