LGBT問題を漫画本から考える!奥浩哉「HEN」から学べる多様な性
ある時、才色兼備な一人の女子高生が恋に落ちました…相手は、転校してきた「女の子」。時同じくして、不良少年の男子高校生が恋に落ちました…相手は電車で見かけた「男の子」。漫画家である奥浩哉先生の作品「HEN」は、そんな同性愛がテーマになっています。
胎児の時に形成される性、それは体の作りで判断されています。しかし、脳の作りや生まれ持った感性も性の一部なのではないでしょうか?人類は、子孫繁栄の為に異性に恋愛感情を抱く事や、興味を示すことを当たり前の様に考えてきました。
故に世界には、同性を愛する事を固く禁じられた法律まで存在します。何故、人を愛することに制限がかかるのでしょう?あなたが当たり前にできている「愛する」という行為を、批判されたり軽蔑されたりしている方達が、実際に存在しているのです。
Contents
LGBTとは?
性的少数者を限定して指した言葉をLGBTと言います。頭文字の総称であり、日本では1990年頃から使われる様になりました。性の多様性やアイデンティティからの文化を強調した、肯定的な意味を持っています。
L:レズビアン(女性同性愛者)
G:ゲイ(男性同性愛者)
B:バイセクシュアル(両性愛者)
T:トランスジェンダー(性同一性障害)
世界には、性についての人権問題に取り組む集団や、芸術や文学などを通して性を表現するサブカルチャー的共同体が存在します。所属している方達を指す時に使われる用語がLGBTなのです。
※今回は、同性愛者や性同一性障害について少しでも理解していただきたいと考えている為、漫画の登場人物を例に進めて行きたいと思います。本来の構成用語であるLGBTから一歩踏み込み、わかりやすくお伝えできたら幸いです。
マンガに登場するアノ子達
「HEN」ちずるちゃんの場合
スタイル抜群で美人、それに頭も良くて運動神経まで兼ね備えた吉田ちずる。私生活は謎に包まれていますが、モテ女特有の自由な生活を送っていました。しかし、どこか冷めている部分があり、恋愛に対して特に興味が無い様子。
気が強く、人を見下す様に過ごして来た「ちずるちゃん」が恋した相手は…何と、九州から引っ越してきた女の子「あずみちゃん」!同性に恋をしてしまった事に戸惑いつつも、純粋にあずみちゃんを愛し続ける姿勢に何度も胸が切なくなります。
そして、本当に人を愛することを知ったちずるちゃんは、人間として成長していきます。
「変」鈴木くんの場合
HENのちずるちゃん同様、高身長でカッコいい!そして不良という何ともモテそうな条件揃いの鈴木くん。そんな「鈴木くん」が恋に落ちた相手は、小柄で可愛い男の子「佐藤くん」!
「どんな女より佐藤の方が可愛い」と思っているそうで、嫌がる佐藤くんを追い掛け回します。かなり強引ですし自分勝手なのですが、本当に佐藤くんが嫌がることはしません。佐藤くんに対する愛が本当に強く、一途に想い続ける姿が何だか泣けてきます。
ちずるちゃんと鈴木くんに共通する事
実は二人共、以前は異性との交際をしていたんですね。そして、それぞれあずみちゃんと佐藤くん以外の同性には興味を示しません。という事は、「誰もが本当は同性に恋愛感情を抱く」可能性があるのだと感じませんか?
相手が異性愛者である為、恋人になれる確率が低い事を二人共わかっているんです。自分が相手を困惑させてしまっている事も知っています。友情に近い感情や行動が描写されたシーンだってあります。
異性間でも、自分でも気づかない間に友情が恋愛感情に変わっていることってありますよね。同性間で同じことが起こらないとは断言できませんよね?つまり、もしかしたら明日、あなたが同性に恋に堕ちる可能性だってあるという事です。
冴木くんの場合
そんな状態を見事に表しているキャラクターが、鈴木くんと佐藤くんが通う高校の同級生である冴木くん。「佐藤を自由にできる権利」を賭けて漫画対決をする事になるのですが、その時に漫画の指導をしてくれていた女の子「滝川さん」と後に付き合うことになります。
鈴木くんに対するライバル心から「佐藤を奪ってしまおう」に移行し、恋愛感情だと勘違いしていただけ?と読者的には感じてしまいます。しかし、滝川さんは女子に告白されてしまう様なボーイッシュな外見。冴木くんは一瞬でも佐藤くんに本気だったのでは!?
トランスジェンダーの苦悩
鈴木くんが愛してやまない佐藤くんですが、作中に「あれ?まさか女の子なんじゃないの?」と感じるシーンが何度かあります。真相は定かではありませんが、佐藤くんはトランスジェンダーだったのかもしれませんね。
性同一性障害の方を、トランスジェンダーと呼びます。性器や体の作りで性別を判断するのが一般的概念となっていますが、その逆もしくはどちらとも言えないと本人が感じてしまう状態です。
男性として生きることを決めた
ここで筆者の周りで実際にあった、男性として生きる事を選んだ方のお話をしたいと思います。ある日、筆者の従兄弟が行きつけの美容院に行きました。従兄弟は飲食店を経営しており、従業員も何人かいます。
仲の良い美容師さんなのでよく話をしていたのですが、その日はこんなお願いをされたそうです。「知り合いの子なんだけど、女の子から男の子になった子が居てね。○○さんの所で働かせてあげて欲しいんだけど…どうかな?」
従兄弟は正直迷ったそうですが、「いいよ、おいで」と言ったそうです。実際に会い話を聞いてみると、今までの職場ではいじめを受けることや辛いことが多かったのだとか。接し方が難しいかなと思ったそうですが、他の男性従業員と同じ!と雇うことに決めたそうです。
まだ仕事を始めたばかりだそうですが、頑張って欲しいなと感じました。そして従兄弟には尊敬の念が湧きました。性を超えて、人として接する事の大切さが溢れていますよね。
※関係性や職種に多少フェイクを入れさせていただきました。
異性愛者が同性愛者に恋をしたら…
実は昔から中性的な男性に惹かれてしまう筆者ですが、この間某バラエティー番組に出ていた男性がとても素敵でついつい見入ってしまいました。一般の方でしたが、オシャレで魅力的な男性だったのです。
しかし、その男性は何と同性愛者!ゲイバーの経営もこなす生粋のゲイだったのです。筆者は思いました、「実際にお会いしてたら、恋しちゃってるよ…」と。たとえテレビ越しでも恋愛感情を抱いたことに変わりありません。
では、異性愛者である筆者が同性愛者である男性(なんか複雑)に胸を熱くさせたソレは一体なんなのでしょう?「恋」ですよ!こうなってくると、もはや恋愛対象の性別なんてよくわからないものに感じてきます。
筆者の可愛い女子力旦那→筆者→ゲイの素敵なあの方⇔恋人の男性。なんだこの関係図…。旦那から筆者への矢印はお気になさらず。笑
性を超えて私たちは同じ「人間」である
男性と女性、分けられた二つの性。それ以前に私達が見つめなければならない事は、個性なのではないでしょうか?異性に恋をするのが当たり前に感じている方が多数かと思いますが、同性または両性に恋をする方だって存在します。
LGBT、それは立派な個性だと筆者は感じます。好きな色が人それぞれ違うように、美味しいと感じる料理に違いがある様に…恋愛感情を抱く対象の性に違いがあったって良いじゃないですか。人を思う気持ちや恋をする喜びは、平等でなくてはならない。そんな自由な世界になっていく事を筆者は願っているのです。
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